[ubuntu-jp:6669] Ubuntu 24.04 LTSの日本語Remixについて

Jun Kobayashi jkbys @ ubuntu.com
2024年 6月 10日 (月) 14:48:28 UTC


小林です。

長年にわたりISOイメージ形式で配布してきた「Ubuntu日本語Remix」ですが、Ubuntu 24.04
LTSではリリースしないことに決定しましたのでお知らせします。

理由は以下の通りです。

▼新しいインストーラー採用に伴うカスタマイズ難易度の増加
Ubuntu 24.04 LTSから新しいインストーラーが導入され、ISOイメージのファイル構成が変更されました。この変更により、ISOイメージをカスタマイズすることが難しくなりました。

▼多言語ライブ環境の非対応化
Ubuntu 24.04 LTSの公式ISOイメージは英語以外のライブ環境に対応しておらず、日本語ライブ環境を実現するためには大きな変更が必要となりました。

Ubuntu日本語RemixのISOイメージの主な利点は、日本語ライブ環境が使えること、およびインターネット未接続状態でも日本語のデスクトップ環境をスムーズにセットアップできることでしたが、同様の対応をUbuntu
24.04 LTSで行うことは上記の理由で困難であるため、リリースをスキップする決断に至りました。

24.10以降のバージョンについても同様となる見込みですが、ISOイメージのカスタマイズ機能が提供されるなど状況の変化により再びUbuntu日本語Remixの配布を行うことになった場合は、改めてお知らせいたします。

なお、パッケージ単位での追加・変更についてですが、かつては快適な日本語デスクトップ環境を実現するため複数のパッケージを追加・変更していたものの、この10年ほどは主にZIPファイル展開時の日本語ファイル名文字化け対策の変更しか加えておりませんでした。
この対策パッケージは、Ubuntu 24.04 LTS以降も引き続き提供する予定です。

Ubuntuに日本語環境向けの変更を加えたISOイメージの配布を開始したのは、今から19年前、2005年でした。
当時はAndroidもiOSも存在せず、インターネットを利用するための主要な手段はPCであり、その大半がWindowsで、WebブラウザのシェアはInternet
Explorerが95%近くを占めていました。
そんな状況で、一般ユーザーにも使いやすいオープンソースのOSを目指してUbuntuは登場しました。
しかし、リリース当初は日本語を含む各種言語への対応が不完全であったため、誰でも簡単にUbuntuの日本語環境をセットアップできることを目指して作成したのが、後のUbuntu日本語Remixにつながる日本語化版ISOイメージでした。

その後、Ubuntuの日本語環境が充実し、一方でスマートフォンの普及によりPCユーザーそのものが減少する状況となり、Ubuntu日本語Remixの継続についても何度か検討を行いましたが、作業手順が確立しており作成に大きな手間がかからないこと、減少しつつも一定数の利用者が存在していること、書籍・雑誌の付録DVDに収録したいという要望を継続的に頂いてきたことなどから、多くの方の協力により、開始当初には想像もしなかったほど長い期間にわたり配布を続けてまいりました。

この度、Ubuntu日本語Remixのリリースはいったん区切りとなりますので、これまで作成・配布にご協力いただいた皆様、ご利用いただいた皆様に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

■Ubuntu 24.04 LTS向けUbuntu Japanese Teamパッケージリポジトリについて

Ubuntu日本語RemixのISOイメージを用いてインストールした際に自動で設定されていたUbuntu Japanese
Teamのリポジトリは、24.04
LTS向けにも引き続き提供いたします。公式のUbuntu、およびその派生ディストリビューションでご利用いただけます。現時点で、以下のパッケージが含まれています。

* ubuntu-defaults-ja
  - このパッケージをインストールすることで、Ubuntuの日本語デスクトップ環境に必要な基本的なパッケージがインストールされていない場合、追加でインストールされます。
  - unzipコマンドでWindowsで作られたZIPファイルを展開する際、ファイル名の文字コードがCP932であるものとして扱うよう環境変数を設定します。
  - Ubuntu Japanese
Teamのリポジトリ設定(署名鍵を含む)の配布元を定期的に確認し、必要に応じて更新します。この機能は、今後予定されているLaunchpad
PPAの署名鍵のより強力なものへの切り替えが発生した際に、ローカルの鍵を自動で切り替えるために追加しました。

* 7zipおよび7zip-standalone
  - ZIPファイルの展開時、環境変数に応じてファイル名の文字化けを回避するパッチを適用しています。
  - 7zipをインストールした環境ではFile
Roller(書庫マネージャー)がZIPファイルの処理に7zipを優先して使うため、このパッチを適用した7zipをインストールしないと日本語ファイル名が文字化けすることがあります。

Ubuntu 24.04 LTSにUbuntu Japanese Teamのパッケージリポジトリを追加するには、以下のコマンドを実行してください。

$ sudo wget https://www.ubuntulinux.jp/sources.list.d/noble.sources -O
/etc/apt/sources.list.d/ubuntu-ja.sources
$ sudo apt -U upgrade
$ sudo apt install ubuntu-defaults-ja

リポジトリ追加後、パッケージ情報の更新時に以下の警告が表示されますが、これはUbuntu 24.04
LTSから1024ビットRSAによるAPTリポジトリ署名鍵が非推奨になったことによるものです。
Launchpad PPAでの再署名と鍵の更新が完了後、この警告は表示されなくなる予定です。

W: http://archive.ubuntulinux.jp/ubuntu/dists/noble/InRelease:
Signature by key 59676CBCF5DFD8C1CEFE375B68B5F60DCDC1D865 uses weak
algorithm (rsa1024)

なお、パッケージリポジトリとしてLaunchpad
PPAではなく、「archive.ubuntulinux.jp」を用いてきたのは、PPAが提供される前からこのリポジトリでパッケージを配布していたことと、以前は「adobereader-jpn」や「lha-sjis」といった、ライセンス的にPPAへのアップロードができないパッケージを配布していたことによるものです。
現在はPPAからミラーしたパッケージだけになっておりますので、将来のバージョンでLaunchpad
PPAを直接ご利用いただくよう変更することを予定しております。

-- 
Jun Kobayashi


ubuntu-jp メーリングリストの案内